角度制御実験機の完成!
(写真1)対称設計のビオゴンには像の流れなどはなく、倍率色収差も僅かです。全面均等なその描写は見事なものです。ついに角度制御の完成です。
(写真2)動かない被写体を見つけたのですが、背景の植物の影が動いていました。2年を費やしてやっとこのレンズが使えることが嬉しい私です。
その後、アナログメカのCCD角度制御はあちこち干渉する微妙な状態をすべてクリアして見事に無段階の動きになりましたが、関門となるLEDの照明には想像以上に苦労しました。ここで、その部分の図面をお見せします。(図下)この図でもお解りのようにCCDの角度が増すと反射板に干渉するので、角度に制約ができてしまいます。この関係で、やむなくデジタルの時よりも角度をやや浅くする事にしました。さらに、本来はCCDと平行に反射板を置きたいところですが、スペースの問題で完全な平行にはできません。以前、YAKUSCAN初期ロットでLEDの照明方法を何度か変更しながら完成直前に山型の反射板に辿り着いたのですが、実はこの時、思わぬ現象が現れたのです。F500のCCDには個体差があって、この山型反射板に対応できるものと、シェーディングエラーを起こすものがあったのです。これには困りました。柔軟性のある優秀なCCDは製品の10台中にたった5台しかなかったのです。この問題に遭遇した私は、当時あわてて予備のF500を複数追加入手したものです。その後、反射板は平行のタイプに戻して照明できる方法が見つかり、最終出荷製品はすべて平行な反射板を採用したのですが、万が一にもエラーが起きないように、すべての製品のCCDは厳選して、特性の良いものに付け替えているのです。その時に反射板は限りなくCCDと平行にすることを教訓としました。ところが、今回はその時に使わなかった特性の良くないCCDを使っているのに加えて、反射板が平行ではないことで、同じエラーに遭遇したのです。それからというもの、特性の良いCCDを探すべく、配線してテストしてエラーが起き、また別のCCDで配線し直してまたエラーということを繰り返していました。そして、4個目のCCDでついに特性の良いものを見つけたのですが、1個のCCDの取付けには接着剤の乾燥も入れて、2日を要します。それを既に4回も繰り返したのですからとても疲れました。この反射板の問題に関しては、PIC制御で水平に戻せるメリットは今から思えば大きかったのだと痛感しています。そもそも、ハッセルのバック構造でなければ、こんな苦労はないのですがSWCを使う為には仕方がありません。途中で、SWCのレンズだけ取り出すことも過りましたが、やはり勿体ないのでそれは断念しました。さて、今回の成果ですが、幾つか撮ってみました。(写真1、2)空をバックとして縦のムラが出なければ、角度制御は順調に働いているという事です。改めてビオゴン描写の素晴らしさを再認識しました。ただし、反射板の干渉の制約で、角度を浅くした分、画面左右端に僅かな減光が見られます。これは簡単な画像処理でも取れますが、今後、LED照明と反射板が干渉しない方法が見つかれば、もう少し角度を付けると完璧なシステムになると思います。しかし、この実験機ではこれ以上の追求は止めておきます。なぜなら、私はこれで角度制御の概念に確信を持ったからです。今回の成果で実験機としては充分に成功と言えるでしょう。もしも、このシステムで新たに作るとしたら、現在の加工精度では問題があります。特にCCDを載せている天秤部分の工作精度はもっと追求しなければなりません。何時になるか分かりませんが、気が向いたらいずれ新設計の最終機を完成させてみたいと考えています。しかし、プランは尽きないもので、実はその前にやってみたいことがまだ控えているのです。ずっと前から暖めていた、これまでの概念には無い、まったく新しい発想のスキャナカメラです。これもA3に行く前にテストしてみたいのです。さて、どんなものが出来るのか?お楽しみに!
追記:その後、写真1をよく観察すると、倍率色収差は画面右側だけに出ていました。右がスタート位置なので、どうやらスタート位置側のCCD角度が足りないようです。これは今後、画面左右のCCD角度を合わせれば調整できるかもしれません。しかし、目視だけで合わせるのは困難なので、テストと調整で合わせなければならないようです。本来、倍率色収差は光学的にも左右対称に出るはずなので、ある意味、角度制御の効果が見えた現象とも言えるのではないでしょうか?
あちら立てれば、こちらが立たず、微妙な関係の反射板と傾斜したCCDなのです。
LEDはここに取付けました。まだ完璧とは言えませんが、実験機はここまでにしておきます。
動画を追加します。アナログメカで無段階の滑らかな動きが、成功の鍵だったようです。
順番にテストしていったCCDの残骸です。3個目あたりで、挫折しそうになりました。(笑 ちなみにF500のCCDはSONY製と判明。
これだけの部品を取り外しても、シンプルなアナログメカの方が、結果は優秀でした。おもしろいものですね!
最終の微調整をしました。
その後、クラウンギアにかかるピニオンの歯数を8〜10歯に変えて角度の微調整をしながら試写を繰り返しました。その結果、ピニオン10歯で約30°の傾斜になり全画面が平均化し、満足できる画質になりました。これでビオゴンを最大限に生かすことができます。このようにブローニーフィルムを遥かに超えた解像度で使用しても、充分に耐える事ができます。もの凄いレンズです。
写真の見方について:ここに掲載の写真ではスキャナカメラの実力が伝わりませんので、写真をクリックしてください。Flickrに飛んだら、写真左上のActionsの中からView all sizesを選ぶと各サイズの写真が見られます。一番右側のOriginalが最大サイズです。しかし、残念ながらサイズ制限があるので、実際の画像サイズまでは掲載できません。
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